ウンコを出さない牛舎について

株式会社アース技研 岩本 尚吾

 平成11年度から施行されている家畜排泄物法が平成1611月から本格的に稼動し始める。そのため、糞尿処理施設に対する関心が以前にも増して高まっている。

 そんな中で、鹿児島県大口市の農家では、屋根に透かしを入れて、糞尿を外に出さないというユニークな牛舎で牛を飼っている農家があるので、その事例を紹介する。

 

A農家(和牛繁殖農家)

   繁殖親牛 50頭、子牛 35

   牛舎新築 平成147月、 アースジェネター給与開始 平成149

 

B農家(和牛一貫 一部導入)

   繁殖親牛 45頭、子牛 35頭、肥育 90

   牛舎新築 平成1412月、アースジェネター給与開始 平成141

    


質疑応答

 

Q.        風通しのよい「フンを出さない牛舎」は、台風の多い九州でどれだけ普及するだろうか、その見通しは?

A.       大口の方ではかなり普及している。知っている農家では、繁殖牛だけを1頭あたり10uの牛舎で、屋根に透かしを入れて飼っており、10ヶ月牛床を構っていない農家もある。

Q.       初めは牛床にどのくらいおがくずを入れるのか?

A.        20cm前後。

Q.       天井が高く、風通しがよい牛舎の台風対策は?

A.        屋根が吹っ飛ぶということはない。台風で牛床がべちゃべちゃになったら、一回すべて出して、また作り直せばよい。倉庫と牛舎を兼用にしたらコストが安くて済む。

Q.       1頭あたり10uというのはかなり余裕があると思うが、この基準を減らすことは出来るか?

A.        減らしてもいいかもしれないし、分からない。農家とずっとどのくらいがいいのか調べていた。すると農家に10uでいけると言われた。

Q.       飲水は自由だが、尿はしっ放しでいいのか?尿のコントロールはしているのか?

A.       尿のコントロールはしていない。

Q.       知っている農家では、裏山で自分でぼかしを作っている。これを床にまいても、炭疸の心配はないか?

A.     牛は、特にいい匂いのする敷料は口にしてしまう。確かに危ないが、どうチェックするかが問題。ぼかしを作る際に、自己責任でチェックする必要がある。




2002年12月から2003年5月に発生したアイノウイルス性先天異常子牛10例の解析

倉瀧英人、西馬場仁、上村俊一、浜名克己(鹿児島大学家畜臨床繁殖学研究室)

 

<はじめに>

1972年以降、南九州各地で中枢神経系の異常を示す先天異常子牛の発生が次々と報告されてきた。これらの原因は母牛に節足動物媒介性の異常産ウイルスが感染したためであった。

 2002年12月から2003年5月にかけて鹿児島大学へ搬入された先天異常子牛の中に、これまでみられたものとはやや異なる中枢神経病変を示す症例がみられた。そこでそれらの子牛10例の解析を行った。

 

<材料>

2002年12月から2003年5月までに鹿児島県内各地から鹿児島大学へ搬入された先天異常子牛44例のうち、神経症状や中枢神経病変のみられた子牛10例を用いた(出生地:姶良郡7例、曽於郡2例、伊佐郡1例)。

 

<方法>

@次の項目を農家から聴取した。

子牛:出生日、日齢、性別、出生地、分娩状況、初乳摂取の有無など            母牛:産歴、ワクチン接種の有無、飼養状況など

A子牛の搬入時に、体重測定、臨床検査、血液検査を行った。また、ウイルス抗体価測定のために血清サンプルを採取した。

B搬入から数日後に、これらの子牛の病理解剖を行い、各臓器の肉眼的病変を観察し、記録した。

 

<結果>

?日齢:28.8±40.8日(1?134日)

?体重:35.1±11.1kg(21?62kg)

?性別:雄8例、雌2例

?出生予定日とのずれ:1.1±8.4日(?10?+15日)

?初乳摂取:あり7例、なし3例

?母牛の異常産ウイルス3種混合ワクチンの接種:あり7例、なし2例、不明1例

10例中1例が難産で、他は正常分娩であった

 

 

 

<症例1>

2002年12月7日生(10日齢)、雌、36kg、栗野町産、ワクチン×、初乳○

症状:起立不能、神経症状

病変:@左右大脳側面ひ薄化A矮小脳症B小脳形成不全(軽度)

脳全体:126g小脳:14g

 

<症例2>

2002年12月23日生(15日齢)、雄、34kg、牧園町産、ワクチン○、初乳○

症状:起立不能、眼振、斜頚、遊泳運動

病変:@大脳前頭葉ひ薄化A矮小脳症B小脳形成不全(重度)

脳全体:90g 小脳:5g

 

<症例3>

2003年1月24日生(3日齢)、雄、30kg、大隅町産、ワクチン○、初乳×

症状:起立困難(介助で可能)、盲目

病変:@大脳実質ひ薄化A大脳一部欠損B矮小脳症C小脳形成不全

脳全体:96g 小脳:11g

 

<症例4>

2002年12月29日生(29日齢)、雄、35kg、大崎町産、ワクチン○、初乳○

症状:起立不能、盲目

病変:@大脳実質ひ薄化A矮小脳症B小脳形成不全(軽度)

脳全体:111g 小脳:15g

 

<症例5>

2003年1月29日生(1日齢)、雄、25kg、横川町産、ワクチン×、初乳×

症状:起立困難(介助で可能)、盲目、遊泳運動

病変:@大脳左後部ひ薄化A矮小脳症B小脳形成不全(重度)

脳全体:101g 小脳:5g

 

<症例6>

2002年12月7日生(58日齢)、雌、62kg、栗野町産、ワクチン○、初乳○

症状:旋回歩行

病変:@大脳両壁ひ薄化A両眼白濁

脳全体:244g 小脳:25g

 

<症例7>

2003年2月19日生(27日齢)、雄、32kg、菱刈町産、ワクチン○、初乳○

症状:起立困難(介助で可能)、左肘関節ゆるい

病変:@大脳一部欠損A矮小脳症B小脳形成不全(重度)C側脳室拡張

脳全体:67g 小脳:7g

 

<症例8>

2003年4月21日生(7日齢)、雄、34kg、溝辺町産、ワクチン不明、初乳×

症状:起立および歩行不能、盲目、四肢の伸展、強直、後弓反張

病変:@小脳形成不全A小脳後部出血B両眼白濁

脳全体:192g 小脳:10g

 

<症例9>

2003年5月2日生(4日齢)、雄、21kg、霧島町産、ワクチン○、初乳○

症状:起立困難(介助で可能)、右前肢屈曲、左前肢外反

病変:@側脳室拡張A関節弯曲症(右前肢)B左右股関節形成不全

脳全体:245g 小脳:20g

 

<症例10>

2002年12月30日生(134日齢)、雄、42kg、牧園町産、ワクチン○、初乳○

症状:削痩、旋回歩行

病変:@右側大脳穿孔A側脳室拡張

脳全体:148g 小脳:20g

 

<まとめ>

今回の発生は、ほとんどが神経症状を示し、1例は体型異常を示した。また、10例すべてに中枢神経病変がみられ、それらは主に大脳の異常、小脳形成不全、矮小脳症が特徴であった。さらに抗体検査の結果もあわせるとアイノウイルス感染症と判定される。

しかし、従来のタイプとは異なり、斜頚、関節や脊椎の屈曲例がほとんどなく、起立不能の程度が以前より軽かった。そのためウイルス変異の可能性も考えられる。

ビタミンAD3E剤筋肉注射後の血中ビタミンA値の変化



蓮沼 浩、 松本大策

(有)シェパード中央家畜診療所

目 的

ビタミンAD3E剤投与が黒毛和種肥育牛( 去勢 )に与える影響を調べ、今後の治療の参考にするために、ビタミンAD3E剤を筋肉注射した後の血中ビタミンA、γ-GTP、GOT、およびTCの値を比較検討した。

 

対 象   平均日齢556日の宮崎県産黒毛和種去勢8頭。

方 法

   試験牛をビタミン投与群および非投与群の2群に分け、投与群には100万単位のV.A ( デュファフラル・フォルテ2ml ) を筋肉注射した。

  ビタミン剤投与日をDay0とし、0123456153060日目に採血を行いV.AGOT、 γ-GTPTCの4項目を調べ比較検討した。

血清ビタミンA値(平均)の変化

V.A投与後の血清V.A値の変化

血清γ−GTPの変化

血清GOTの変化

血清t-Choの変化

結 果

ビタミンA ( 100IU )筋肉注射後急速に血中V.A濃度は上昇した。しかし、15日目には血中濃度は低下し、60日目にはほぼ投与前と同じ値となった。

γ- GTPの高い個体は血中V.A値の上昇が他の個体と比べ低い傾向があった。

ビタミンA投与後γ- GTPGOTはやや下がる傾向が認められた。

考 察

ビタミンAは体内吸収後すみやかに肝臓へ貯蔵され生体の必要に応じて全身代謝にまわるため、一時的に上昇した血清V.A濃度は徐々に低下したと考えられる。

肝機能が低くコレステロールの生合成の低下した個体では血中V.A値の上昇が他の個体と比べ低くなった可能性が考えられる。

V.A投与によりエンドトキシンの産生低下が起こった可能性が考えられた。

考 察

ビタミンAは体内吸収後すみやかに肝臓の伊藤細胞へ貯蔵され生体の必要に応じて全身代謝にまわる。このため一時的に上昇した血清V.A濃度は徐々に低下したと考えられるが、このことから血清濃度が同一でも全身の貯蔵ビタミン量が同じとは言えない。

投与したV.Aは、血液中の脂質と結合して肝臓に輸送される。このことからγ- GTPの高い個体、すなわち肝機能が低くコレステロールの生合成の低下した個体では血中V.A値の上昇が他の個体と比べ低くなった可能性が考えられる。

V.A投与により粘膜上皮の機能の改善や免疫活性の向上があるため、第一胃で産成された酸の吸収効率が上がりルーメンアシドーシス傾向の改善にともなうエンドトキシンの産生低下が起こった可能性が考えられた。





 

体外受精胚の移植を受けたホルスタイン種乳牛から産まれた正面対向重複奇形子牛

〇芝原 彩1〉、上村俊一1〉、浜名克己1〉、永野直之2〉

1)鹿大、2)永野動物病院・熊本県

 

 重複奇形とは、卵割初期に割球が不完全に2つに分離して生じた発生異常のことで、頭部ニ重体、胸結合体、寄生性二殿体などがある。発生は先天性奇形の中でもまれで、牛では10万頭に1頭の割合とされている。今回、体外受精胚の移植を受けた牛から産まれた正面対向重複奇形子牛に遭遇した。

 症例:母牛は産歴1産のホルスタイン種乳牛で、2002年7月5日に体外受精胚の移植を受け、2003年4月13日に帝王切開術により本子牛が摘出された。症例は黒毛和種、雄、体重71kgで、2個体が両腕を広げて向かい合った状態で接合していた。なお出生直後は生存していたが、まもなく衰弱し死亡した。

 外貌および剖検所見:(1)外貌;頭部、脊柱、尾は各2つずつ存在した。前肢は4本あり、後肢は正常大のものが2本と約30cmの短小寄生肢が背側中央に1本みられた。この寄生肢は細く、単蹄であった。肛門はなく、その部位にごく少量の薄茶色の液がみられた。陰茎、陰嚢は不明で、精巣も触知できなかった。(2)剖検所見;脳を含む頭部と顔面の構造は2個体とも正常であった。2個の心臓は近接して頸部に存在していた(頸部逸所心)。横隔膜は存在せず(横隔膜ヘルニア)、胃と腸が胸腔に侵入し、肺は萎縮して痕跡的であった。2本の腸管は回腸の上3分の1で融合し、盲腸、結腸、直腸は1本であった。直腸は盲端で終わっているが、左右2個の膀胱と連絡しており、膀胱内には胎便が尿に混じって大量に存在していた。胃、肝臓、脾臓、腎臓、潜在精巣は各2組存在した。脊柱は湾曲し、肋骨はいずれも左右に開いたような形で2組存在した。左右脊柱は骨盤部で融合し、そこから寄生肢が出ていた。

 考察:本症例は頭側から尾側へ行くほど結合が重度であったことから、本来単体として発育すべき胚が前位から二個体として分離をはじめたが、何らかの原因で分離が不完全となり、そのまま発育したものと考えられる。原因は不明であるが、体外受精操作による何らかの外的要因が胚に影響を与えた可能性も考えられる。本症例は重度の重複奇形であり、非常にまれな例であるとともに、体外受精胚移植との関連があり貴重な症例である。







生菌混合飼料 サルトーゼ

共立製薬株式会社

 

 

<従来の生菌製剤を超える実力>

△従来の生菌剤=腸内有用菌を増やし、且つ腸内細菌叢を整えて有害細菌を締め出すという、言わばCE剤的な作用

◎サルトーゼ=自らの増殖力が強く、また細胞壁を溶かす酵素を出す。飼料の消化を助け、また有害微生物の活動を阻害する。さらに腸内で100倍に増殖し、排出された成分が環境中の有害微生物を阻害すること期待できる。

 

<サルトーゼの成分と特徴>

Beta−キシラナーゼ

・セルウォールリアーゼ

・プロテアーゼ

・バチルス菌(サブチルス5株)

⇒飼料物質の細胞壁を分解する

⇒腸内有害菌の細胞壁・膜に作用し、菌を破壊もしくは成長を阻害する

⇒スカトールを形成するクロストリジウムに作用する

 

<サルトーゼに含まれるバチルスの開発の経緯>

1、世界各国、1万数千種類の中からセレクトされた5種類のバチルス菌(枯草菌)である。

2、セレクトの方法は、抗生物質を産生せず、独自の酵素を出しサルモネラの細胞壁を壊す能力があるものに限った。

 ※サルトーゼに含まれるバチルスは、すべて生菌製剤としてFDAで認可されている

 ※日本の飼料法に定められた配合許可菌類にも適合している

 

<サルトーゼのバチルス属>

@バチルス・サブチルス チェンマイ (中国)

Aバチルス・サブチルス トルパン (中国)

Bバチルス・サブチルス バリランド (インドネシア)

Cバチルス・サブチルス タイランド (タイ)

Dバチルス・サブチルス ノルウェー (ノルウェー)

 

 

<各菌種の抗SE作用>

l好気性培養試験

⇒培地にアメリカのSE標準株であるATCC株を10個培養し各菌を接種し阻止円の形成を確認した。1・6・7・8・9がサルトーゼに含まれるバチルス菌である。

l嫌気性培養試験

TCは日本で使用されている代表的な生菌製剤。

S1STS2SGである。サルトーゼのバチルス以外阻止円を形成することができない。いかにSEが強いかがわかる。

 

<鶏腸内有用微生物に対する作用>

◎サルトーゼは鶏腸内の有用微生物に対しては作用しない

鶏の代表的な腸内有用菌であるL.acidophilus培地に、サルトーゼの菌を接種した。まったく影響を及ぼしていない。B.bifidum培地でも同様の結果であった。

 

<サルモネラ抑制試験(バチルス単味との比較)・SE>

lバチルスサブチルス単味とSEを並べて培養した。

⇒バチルス単味だとSEに近づくと成長が止まってしまう。

lSEとサルトーゼを並べて培養した。

⇒バチルス単味だと負けてしまうのに対し、サルトーゼはSEを包含してしまう。

 

<サルモネラ抑制試験(バチルス単味との比較)・ST>

lバチルスサブチルス単味とSTを並べて培養した。

⇒SEと比較して弱いと思われるSTでも、バチルス単味は成長縁がSTに近づくと止まってしまう。

lSTとサルトーゼを並べて培養した。

⇒STであってもバチルス単味だと負けてしまうのに対し、サルトーゼではSE同様に包含してしまう。

 

<クロストリジウム拮抗試験>

菌面積も阻止円も広がりを見せる

30時間を過ぎると菌の成長は止まるが、阻止円は広がり続ける。酵素を出し続けていることを示している。

lC.skatologenesを含んだ培地の中心に、サルトーゼを構成する菌を接種し、その増殖と拮抗を観察した。

⇒菌の増殖は30時間程で止まるが、拮抗はその後も拡大し続ける。酵素を放出し続けることを示す。

 

 

 

<サルトーゼの抗サルモネラ・抗クロストリジウム試験>

結果

◎サルトーゼをin vitro で培養したところ、様々な有害菌を阻害する作用が確認された。一方、有用菌に対しては影響を及ぼさないという特性が確かめられた

 

<サルトーゼによるコクシジウム抑制効果>

◎テスト方法

  コクシジウム感染鶏群の鶏糞から採取した

  コクシジウムオーシスト(テネラ)を試験管内にて培養(36℃・12時間)

 1、対照区:無処置

 2、試験区:サルトーゼ菌より産生された酵素セルウォールリアーゼ(Cell wall lyase)0.05%添加

【対照区】

オーシストが発芽し、中のスポロゾイドが脱殻

オーシストはそのままの状態で生存

【試験区】

完全に崩壊したオーシスト(上)と

崩壊が始まっているオーシスト(下)

完全に崩壊し原型をとどめていないオーシスト

◎結果

サルトーゼの菌はコクシジウム並びにスポロゾイドの抑制に効果があることがIn vitroで確認された。

 

<サルトーゼ鶏糞の抗SE試験>

lレイヤー成鶏にサルトーゼを005%添加した飼料を2日間給与し、その鶏糞を100℃ウォーターバスにて20分間滅菌したものをSE培地に接種した。

⇒鶏糞中に排出されたサルトーゼにおいても抗SE作用を確認できた。

 

<サルトーゼ鶏糞の抗クロスト試験>

l抗SE試験と同じ鶏糞を、同様に100倍・1000倍に希釈してクロスト培地に接種した試験。

⇒SEと同様に阻止円を形成する。

 

<サルトーゼ鶏糞の抗SE・抗クロスト試験>

結果

◎飼料中に添加し鶏糞に排出されたサルトーゼは抗サルモネラ・抗クロスト作用を示し、鶏体内はもとより、環境中の有害微生物コントロールに役立つ可能性が示唆された。

 

 

コクシジウム汚染農場での清浄効果〜北海道十勝地方F1肥育牧場の実例〜

 

背景>

・無薬で育ったF1素牛を月100頭導入

・常時2,400頭を飼養している

・コクシによる下痢〜発育の遅れに悩んでおり牧区の消毒・薬剤投与などの対策を講じていたが、毎回同じことの繰り返しであった。

・コクシの根絶と、消費者に完全無薬の食肉を提供したいという夢からプロバイオティクスの応用を検討していた。

 

<肉牛生産におけるコクシジウムの弊害>

下痢・血便

体液、血中ビタミン喪失

衰弱                   

疾病による発育不良                

諸々のストレス

 

免疫機能低下

 

<当該牧場でのこれまでの対策>

抗生剤使用(年間約300万円)

⇒コクシ対策プログラム

発生したら1週間を目安に飼料添加、1週ごとに糞便検査

※コクシ発生牛舎は決まっている(3牛舎、250頭)

 

<サルトーゼの使用目的>

牛体のコクシ対策

⇒今回の試験で確かめる

環境のコクシ対策

⇒コクシジウム発生の牧区は決まっている。

 徹底的な消毒を行っているにもかかわらず一向に変化がない。汚染牧区をサルトーゼの有用菌に置き換えたい。

 

 

<サルトーゼ飼料添加試験成績(500/t)>


<実数値・オーシスト数の推移(対照区)>


 

<実数値・オーシスト数の推移(試験区)>

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


<考察>

短期間の試験であったが、オーシスト数の推移データから効果ありと判断した。

さらに、サルトーゼに含まれる菌は通過菌であることから、糞便と共に排出された有用菌が、環境中のコクシをコントロールすることが期待できる。

 

<総括>

薬剤費の単純比較では、サルトーゼ0.05%添加の方が高いが、20028月より本採用となった。

モニタリングしながら0.01%までもっていきたい。(0.01%でコストが同等)

素牛は無薬牛(抗生物質を全く投与しない)であり、無薬で仕上げまでもって行きたい意向である。

 

<下痢症の子牛へのサルトーゼ給与治癒までの日数の比較〜>

サルトーゼ群:平均3.57日

対照群:平均7.71日

※獣医師雑誌「臨床獣医」:2003年7月号掲載(特にクリプトストリジウムによる下痢での試験)

 

<最後に>

サルトーゼに関するお問い合わせは

共立製薬株式会社 鹿児島出張所

住所:鹿児島市上之園町24−2−4F

電話:099−813−1838

FAX:099−253−8444

携帯:090−2579−7493(中原)






生菌剤を止めるタイミングは

宮崎大学農学部獣医学科家畜衛生学講座      末吉益雄

889-2192 宮崎市学園木花台西1-1

電話0985-58-7282 FAX 0985-58-7282

a0d802u@cc.miyazaki-u.ac.jp


生菌剤に頼ったきっかけ  →  大腸菌感染症対策として

大腸菌:腸内細菌科 大腸菌属 大腸菌

     グラム陰性、通性嫌気性 0.4?0.71?3.0?m

     周毛性鞭毛、運動性あり 芽胞?、莢膜+?

 大腸菌による障害 病原大腸菌による障害

          非病原大腸菌による異所性感染

 病原大腸菌;下痢原性

     ?腸管毒素原性大腸菌(ETEC)

     ?腸管病素原性大腸菌(EPEC)

     ?腸管組織侵入性大腸菌(EIEC)

     ?志賀毒素産生性大腸菌(STEC

     ?腸管出血性大腸菌(EHEC) など





豚と大腸菌 1.浮腫病とは

(1)     発生状況

◆発症時期---離乳、肥育前期に移行後7〜10日後が主(2週間以後の哺乳豚)

◆症状---しばしば前駆症状なしに24時間以内に急死

          餌箱に向かう時の歩行がふらつく

          前肢、後肢のコントロールがきかない

          歩様蹌踉は著明、犬座姿勢、間代性痙攣、遊泳運動などの神経症状、死亡

◆慢性経過---発育遅延、間代性痙攣あるいは遊  泳運動あるいは神経症状もなく死 (脳脊髄血管症)

臨床症状

外貌所見---眼瞼周囲、前頭部、鼠径部などの皮下の水腫(全身の浮腫)、耳垂れ、キーキー鳴声

(喉頭水腫に起因)、死亡前に大きく口をあけいびき音発声

◆体温---変化なし

◆その他---しばしば便秘、エンテロトキシン産         生株の場合---浮腫症状の前に下痢が発現

病理所見

(a) 肉眼病変

◆全身性の浮腫

◆胃の大弯部、腸間膜リンパ節、肺、胆嚢壁---水腫性腫脹

◆心臓---点状出血

◆胃、小腸、大腸---出血

◆脳幹部---軟化病巣


 

U             供試菌株:浮腫病豚から分離された STEC O139

U             供試薬剤:15種類

U             方法:供試菌株を薬剤添加培地

       (3濃度=1/16MIC、 MIC、16MIC)で4hrs  

        静置培養後の生菌数と、培養上清および沈渣の超     




牛と大腸菌 感染防除の試み

U             富永潔ら、日獣会誌、42( ),775-779,1989O5:H-

U             T. Iijima et al., Jpn. J. Vet. Sci., 52(6), 1347-1350,1990O26:H11

U             宇野健治ら、日獣会誌、45(9), 650-654,1992O119, O146

U             上村伸子ら、家保業績集、10, 65-71, 1995O111:H-

U             黒木昭浩ら、日獣会誌、49(1), 9-12, 1996O26

U             福井英彦ら、日獣会誌、49(8), 517-522, 1996O26:H11 , O103:H2, O118:H16

U             富永潔ら、私信、1996O145:H-

背景 3戸の肉用牛生産農場において、子牛の死亡事故に  STECの関与が示唆され、STECに関する調査を実施

 調査結果(1998〜 1999年) ・当該農場で、子牛を中心とするSTECの常在化を確認?

             ・STEC排除におけるビコザマイシン (BCM) の有用性

目的 子牛からのSTEC排除  当該農場からのSTEC排除


STEC清浄化計画

T群 BCM(経口投与5日間)

STEC検査:投与前、投与直後、2週間後、1ヶ月後

投薬:BCMを10mg/kg/日

下痢発生率はcontrol群に比べ有意に減少(0%)

抗菌剤は除菌効果大 しかし中長期持続使用するわけにはいかない

U群 BCM経口投与5日間+生菌製剤(毎日)

STEC検査:投与前、投与直後、2週間後、1、2、3、4ヶ月後 1年後

投薬:BCMを10mg/kg/日

投与後一度は下痢はなくなったものの4ヶ月後に再び発症

V群 投与前生菌製剤(毎日)+BCM経口投与5日間+生菌製剤(毎日)

STEC検査:投与前、投与直後、2週間後、1、2、3、4ヶ月後 1年後

投薬:BCMを10mg/kg/日

発症せず

農場飼養子牛のSTEC保菌再調査(1年後)→有意に減少

                    しかし、0にはならない

STECは通過菌

STECの体内推移

増加、減少をくりかえす

生菌製剤を使用すれば、増加の量を減らせる→0にはならない

 

丈夫な体にするもうひとつの方法→おなかをじょうぶにする

生菌製剤

病原菌が口に入ってもお腹の中で増殖がおさえられる

↓          ↓           ↓

糞の悪臭が抑えられる 善玉菌による発酵刺激 下痢がない、死亡事故減

↓              ↓

蠅が増えない(運び屋)  栄養消化吸収

↓              ↓

環境改善          増大量アップ

(肺炎、繁殖障害、乳房炎への効果は不明)

 

生菌剤の気になる点

目に見える効果が短期間では分からない。(半年?1年間で前年実績(増体率、治療回数、死亡事故)と比較)

毎日与えないと元に戻る。

衛生管理の手抜き。

 

◯生菌剤を止めるタイミングは?
 ■保菌動物がいないだけでは止められない(環境中から経口的に感染循環成立)
 ■飼養環境中にいなくなるまで止められない(農場内フローラ対策)
 ■検疫をしっかりしなければならない(農場の清浄度を維持する)

 



プロジェステロン製剤CIDRによる牛卵胞嚢腫の治療試験

羽上田陽子1) Doreen Ndossi1) 上村俊一1) 浜名克己1) 松崎和俊2) 松下俊彦2) 

野尻雄二3) 海蔵俊一4)

1)鹿大 2)NOSAI中部 3)NOSAI北薩 4)NOSAI西諸

 

 卵胞嚢腫とは、直径25mm以上の卵胞が排卵することなく存続することであり、下垂体からの持続的なLH分泌が原因とされている。今回、プロジェステロン製剤であるCIDRPGF2α投与による卵胞嚢腫の治療試験を行った。

 供試牛として、鹿児島県内および宮崎県内で、無発情または持続性発情との病歴で往診し、卵巣嚢腫と診断された牛40頭を用いた。これらの牛を2群に分け、1群(29頭)では7日間、2群(11頭)では14日間CIDRを挿入し、除去時にPGF2α(プロナルゴン25mg)を投与した。各群ともCIDR挿入時とCIDR除去後14日に採血および直腸検査を行い、血中P4濃度と嚢腫卵胞の有無を調べた。卵胞嚢腫の基準として、直腸検査により卵巣に大型の卵胞(直径>20mm)があり、黄体が存在せず、かつ血中P4濃度が1.0ng/ml以下を示すものとした。

 供試した40頭のうち、CIDR挿入時に血中P4濃度が1.0ng/ml以下の卵胞嚢腫牛は、112頭、23頭で、他の25頭は1.0ng/ml以上であり、黄体嚢腫(嚢腫様黄体を含む)と判定された。卵胞嚢腫15頭のうち11頭でCIDR除去後1週間以内に発情がみられ、これらの血中P4濃度はCIDR挿入時10.3±0.3ng/ml20.3±0.1ng/mlが、CIDR除去後14日にはそれぞれ3.7±1.6ng/ml2.4±1.9ng/mlまで増加した。一方、黄体嚢腫と診断された25頭のうち、16頭で発情がみられた。

 今回、卵胞嚢腫の牛ではCIDR7日あるいは14日間挿入とPGF2α投与により、新たな卵胞の発育と排卵、黄体形成がみられ、卵胞嚢腫は治癒した。一方、黄体嚢腫でも25頭中16頭に発情がみられ、本法は有効であった。


質疑

Q.       卵胞嚢腫治療でCIDRを抜いた後PGを打っているが、これはどうして?

A.        発情がこないと農家は納得しない。エコー画像を見せれば早いが、それが出来ない場合はPGを打って発情を来させる必要がある。またPGを打ったほうがリスクが少ない。

Q.       乳牛の嚢腫は飼料の問題か?

A.       いい乳牛は乳量は多いが、嚢腫になることが多い。人が作った病気といえる。

 




カンピロバクター属菌

 鞭毛

 グラム陰性のらせん状細菌

活発な運動性

微好気性細菌

乾燥に弱い、低温(
4℃でも長期間生存)

健康な家畜・家禽・野生動物の腸管に保菌


C.fetusによる伝染性不妊・流産

食中毒原因菌としてのカンピロバクター

発生頻度が高い

・ 少ない菌量で感染が成立する

・ ギランバレー症候群との関連性


症状

潜伏期間2〜7日間 多くの細菌性食中毒と類似

・ 下痢(1〜3日間にわたり、水溶便・粘血便もある)

・ 腹痛(子供ほど重い)

・ 発熱(39度以下が大部分)

     死亡例は少ない 1〜2週間で完全回復




 質疑応答

Q.        風通しのよい「フンを出さない牛舎」は、台風の多い九州でどれだけ普及するだろうか、その見通しは?

A.       大口の方ではかなり普及している。知っている農家では、繁殖牛だけを1頭あたり10uの牛舎で、屋根に透かしを入れて飼っており、10ヶ月牛床を構っていない農家もある。

Q.       初めは牛床にどのくらいおがくずを入れるのか?

A.        20cm前後。

Q.       天井が高く、風通しがよい牛舎の台風対策は?

A.        屋根が吹っ飛ぶということはない。台風で牛床がべちゃべちゃになったら、一回すべて出して、また作り直せばよい。倉庫と牛舎を兼用にしたらコストが安くて済む。

Q.       1頭あたり10uというのはかなり余裕があると思うが、この基準を減らすことは出来るか?

A.        減らしてもいいかもしれないし、分からない。農家とずっとどのくらいがいいのか調べていた。すると農家に10uでいけると言われた。

Q.       飲水は自由だが、尿はしっ放しでいいのか?尿のコントロールはしているのか?

A.       尿のコントロールはしていない。

Q.       知っている農家では、裏山で自分でぼかしを作っている。これを床にまいても、炭疸の心配はないか?

A.     牛は、特にいい匂いのする敷料は口にしてしまう。確かに危ないが、どうチェックするかが問題。ぼかしを作る際に、自己責任でチェックする必要がある。

Q.        生菌剤を使っていたが、夏場血便が出た。農家からも言われたが、飼料のカビ毒が原因ではないかと考えている。何かいい薬は?

A.        アメリカの会社の薬で効いたものもあった。カビ毒は、タンクのエサで多い。夏場にタンクの湿度が上がるからではないか。あとストレスの影響も考えられる。

Q.       カビと血便の関係が報告された例が少ない。実際どうなのか?

A.       家保で飼料中のカビの陽性反応を調べてはどうか。生化学検査で十分出る。

(ここで、最近の飼料(輸入物)の質が低下していることが話題にのぼる)

Q.       硝酸態中毒は繁殖障害と関連があるのか?

A.        過去繁殖障害の牛の硝酸態窒素やアンモニアの検査を行ったことがあるが、出てこなかった。ある時期のある地区で取ったものに窒素が多いのであって、今そこでとった草からはでてこない。農家が基礎的なところをやって初めてホルモン剤等の理論が通用する。

Q.       卵胞嚢腫治療でCIDRを抜いた後PGを打っているが、これはどうして?

A.        発情がこないと農家は納得しない。エコー画像を見せれば早いが、それが出来ない場合はPGを打って発情を来させる必要がある。またPGを打ったほうがリスクが少ない。

Q.       乳牛の嚢腫は飼料の問題か?

A.       いい乳牛は乳量は多いが、嚢腫になることが多い。人が作った病気といえる。